鏡のパラドックス/まとめ


解説

ここでは「鏡は左右を逆転する」とはどういうことなのか考えてみる
詳細な解説が読みたい方は次をご覧ください

まとめ

「鏡は左右を逆転する」は,鏡の物理的側面,鏡像の数学的側面,人間の心理面にわけて考えると理解しやすい
以下はすべて正しい事実である
  1. 元の像を左右逆にすると鏡像ができる
  2. 鏡像は左右逆転像と考えると理解しやすい(左手と右手の関係)
  3. 元の像を前後逆にすると鏡像ができる
  4. 鏡は鏡面に対して前後を逆にし,鏡面に対して左右は逆にしない

上の話をまとめて中間を省くと「鏡は左右を逆転する」という表現が誕生する
「鏡は左右を逆転する」は完全に間違いというわけではないが中間を省きすぎて誤解しやすくなっている

△:鏡は左右を逆転する

左右というのは誰から見た左右なのかがあいまいである
×:鏡は鏡面に対して左右を逆転する
〇:鏡は対象物の左右を逆転した鏡像を作る

×:鏡は鏡面に対して左右を逆転する

「鏡は左右を逆転する」をこの見出しのように解釈すると間違った結果になる
鏡台の前に座って左からミカン,リンゴ,バナナと並べる
鏡の中の人物を無視すれば鏡の中でも左からミカン,リンゴ,バナナと並んでいる
鏡は物理的に鏡面に対して左右逆転する機能を持たないことが実験的に証明される
鏡台の前に座って手前から奥にミカン,リンゴ,バナナと並べる
鏡の中の人物を無視すれば鏡の中では手前からバナナ,リンゴ,ミカンと並んでいる
鏡は物理的に鏡面に対して前後逆転する機能を持つことが実験的に証明される
正しくは
〇:鏡は鏡面に対して前後逆転像を作る

〇:鏡は鏡像を作る

鏡に正対すると自分に対して前後が逆転した像ができるが,これは鏡像である
自分の左側に鏡を立てると自分に対して左右が逆転した像ができるが,これは鏡像である
床に置いた鏡の上に立つと自分に対して上下が逆転した像ができるが,これは鏡像である
手鏡を斜め上にかざして自分を見ると妙な角度の自分像ができるが,これは鏡像である
つまり自分に限らずどんな対象物も,鏡との相対的位置にかかわらず鏡に映った像は鏡像である
ただおおむね面対称とみなせる対象物(たとえばリンゴの実)の鏡像は元の像と区別がつきにくい

△:鏡像は左右だけ逆転している

表現があいまいなので解釈次第で正誤がわからない
×:上下逆転した像は鏡像ではない
上下逆転した像も鏡像である
〇:左右上下両方逆転した像は鏡像ではない
左右逆転した像をさらに上下逆転すると鏡像の鏡像になるので元の像に戻る
写真の画像はレンズに対して上下左右両方が逆転し,前後は逆転しないので鏡像にならない

なぜ「鏡像は前後逆」といわずに「鏡像は左右逆」というのか

はっきりしないが,私は次の理由が一番だと考える
  • 「上下」「前後」「左右」の中では「左右」が一番重要でないため

その他の理由の一つは次だと思う
  • 鏡像を説明するのに身近な例は左手と右手であるため(人間の体が左右対称)
左手と右手はそのままではぴったり重ね合わせることができない
右手を鏡に映した鏡像は左手と(ほぼ)ぴったり重ね合わせることができる
つまり左手と右手はお互い鏡像関係にある

科学の世界でも左手系・右手系とか左手の法則・右手の法則など鏡像を区別するのに左右が大活躍する

「左右」が一番重要でない客観的証拠は何か

以下の事実があると勝手に思っているのですがどうでしょう
  • 上下と前後は幼少時から意識されるが,左右を正しく理解するには訓練が必要

「左右」が一番重要でない理由は何か

これは心理学的な問題だと思うが,次のことがヒントになるかもしれない
  • 人間が重力のある陸上で生活してきたことが上下が重要だと考える理由かもしれない
  • 目が前面(普通の進行方向)についてることが前後が重要と考える理由かもしれない
  • 頭上に岩があるのと足元に岩があるのでは気分が異なる
  • 広い場所で前方に歩くのと後ろに後ずさりするのでは気分が異なる
  • 広い場所で左に蟹歩きするのと右に蟹歩きするのでは前二者ほどは気分が異ならない

参考文献

筆者が最初にこの問題に興味を持ったのは広瀬正さんの次の本を読んだ時からだ
これは全集版(しかもKindle)だが私が読んだのは単行本だったけど多分内容は変わらないと思う
小説なのだが作中に子供向けの科学番組が登場して「なぜ鏡は左右だけ逆にするのか」やさしく解説してくれる
私の解説よりずっとわかりやすい

でも私の解説には本に書いていない内容もあるので私の解説も読んでほしい...


  • 最終更新:2017-06-06 10:49:59

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